一社)日本ハイパーサーミア学会ニュースNo.148【学術報告67】

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磁性ハイパーサーミアのためのナノ粒子イメージング

長谷川英之(富山大学)

 

ナノ粒子の医学,生命科学分野への応用が非常に活発である.磁性ハイパーサーミア(Magnetic hyperthermia)をPubMedで検索すると,3,000篇以上の論文がヒットする.近年,より精緻な診断治療のため診断と治療の両技術の融合が期待されている.ここでは磁性ナノ粒子を用いたイメージング法に関する論文を紹介する.磁性粒子イメージング法(Magnetic Particle Imaging: MPI)1)は,磁性ナノ粒子に交流磁場を印加した際に,磁性ナノ粒子の磁化が周期的に変化することにより外部の受信コイルに発生する起電力を検出して画像化を行う手法である.磁気粒子イメージング法で用いる交流磁場の周波数(例えば300 kHz)における電磁波の波長は100 m程度であり,集束により達成できる空間分解能は波長程度であるため,生体のイメージングには応用できない.そのため,高強度の傾斜静磁場を形成する手法を用いている.磁気粒子イメージング法では,磁性ナノ粒子に交流磁場を印加するが,高強度の静磁場により磁化が飽和していれば,静磁場に対して十分弱い交流磁場では磁化の方向は変化しない.一方,二つの静磁場用コイルを対向させ,傾斜静磁場とすれば,静磁場の極性が反転する点(ゼロクロス点)の狭い領域では静磁場の強度が小さくなり,交流磁場により磁性ナノ粒子の磁化が変化するようになる.このような原理によって,特定の位置(傾斜静磁場のゼロクロス点近傍)のみの磁性ナノ粒子を検出することが可能である.静磁場のゼロクロス点を空間的に走査することにより画像化も可能である.空間分解能としては,7 T/mの傾斜静磁場と粒径25 nmの磁性ナノ粒子を用いて1.7 mmが実現されている2).また,生体組織の磁化特性は線形に近いが,磁性ナノ粒子の磁化特性は一般的に非線形であるため,磁性ナノ粒子からは交流磁場により高調波が検出される.生体組織からは基本周波数成分しか発生しないため,高調波を用いてイメージングを行うことにより,生体組織からのバックグラウンドノイズの少ない画像を得ることが可能である.

磁性ナノ粒子に交流磁場を印加すると発熱することから,磁性ナノ粒子によるハイパーサーミア治療が検討されている.磁気粒子イメージング法で検出される信号の強度は,磁性ナノ粒子の量と良好な相関関係があるため,交流磁場の印加により発生する熱の予測も可能であり,診断と治療を両立するセラノスティクス法としての可能性を秘めている.特に,この磁性ナノ粒子を用いた手法では,発熱を利用したハイパーサーミア治療においても,傾斜静磁場を利用した同様の原理により発熱箇所を空間的に選択しており,イメージング手法との親和性が高く,in situでのモニタリングと治療の両立が期待されている.また,交流磁場による磁性ナノ粒子の機械的振動により周囲環境の粘性特性を計測できるため,細胞のアポトーシス過程における粘性特性の変化を計測して細胞活性を評価するなど,さまざまな応用が検討されている3)

 以上,磁性ハイパーサーミアにおいてはまさにナノヒーティング・ナノイメージングが可能で,早期の臨床応用が期待されている.

参考文献

  1. Gleich B, et al. Tomographic imaging using the nonlinear response of magnetic particles. Nature, 435: 1214–17, 2005.
  2. Tay ZW, et al. The relaxation wall: Experimental limits to improving MPI spatial resolution by increasing nanoparticle core size. Biomed Phys Eng Express, 3:035003, 2017.
  3. Lu Y, et al. Combining magnetic particle imaging and magnetic fluid hyperthermia for localized and image-guided treatment. Int J Hyperthermia, 37: 141-54, 2020.

用語解説

磁性(磁気)ハイパーサーミアがん細胞周辺に磁性発熱体を注入し,体外から交流磁場を印加することにより発熱させ,がん細胞のみを局所的に加温して死滅させる治療法である.磁性パラメータとハイパーサーミア用磁性微粒子の最適化が課題である.これに関するがん細胞選択性機能性ナノ粒子の開発が急速に進んでいる.

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