学術報告

ハイパーサーミアに関する最近の話題28

 

肝細胞がんにおいて保護的オートファジーの阻害はATP-AMPK-mTORを介して温熱誘発アポトーシスを増強する

近藤 隆(富山大学大学院医学薬学研究部

 

RFA(Radiofrequency Ablation)*1は比較的小さな肝細胞がんに対して根治が望める治療法である.一方,不十分なRFA領域では,上皮間葉転換やHIF-1α/VEGFA経路を介して残存がん細胞による局所再発や再増殖を誘発するとされている.本論文では,亜致死的温熱処理でATP-AMPK-mTORシグナル経路を介して,オートファジーがアポトーシスを阻害することを示した1).用いた細胞は,2種類のヒト肝細胞がん,SMMC7721(野生型p53)および Huh7(変異型p53)で,BALB/cヌードマウスへの移植系でも調べた.実験に当たってはRFA治療を模した亜致死的温熱処理(43,45,47oC)で30分あるいは1時間の処理をした.これらの処理は温度依存性にオートファジーを誘発した.オートファジーをクロロキン*2や, Beclin 1とAtg5をsiRNAで阻害すると温熱47oC誘発アポトーシスをin vitro でもin vivoでも増強した.また,これらの処理はがん細胞増殖を阻害し,移植腫瘍の増殖を顕著に抑制した.温熱誘発オートファジーのメカニズムとして,細胞内ATPの低下が,AMP/ATP比の増加を引き起こし,これはThr172のリン酸化を介して,AMPKαを活性化する.その結果,オートファジーを抑制するmTORを阻害する.オートファジーは温熱誘発アポトーシスに対して保護的に作用するので,クロロキンによるオートファジー阻害は温熱誘発アポトーシスを増強する.この経路の介在はAMPK*3の活性化因子AICAR*4およびAMPK阻害剤であるCompound Cの添加実験で確認された.

最近,RAF→ MEK→ERKの阻害により引き起こされる保護的オートファジーは,RAS誘導性がんに対する一つの治療戦略であることが報告された2).この論文は,難治がんである膵臓がんに対して細胞レベルおよび担がんマウスモデルで,トラメチニブ*5+クロロキン処理で増殖抑制効果を確認した後,臨床的に化学療法に不応答患者に対しても治療効果を示した画期的内容である.

アポトーシスを中心とする細胞死の様式も現在,12種類に分類されている3).これら細胞死は共通のシグナル伝達系を利用することもあり,独立したものではなく,相互関係があることが知られている.オートファジーも保護的オートファジー(protective autophagy)と定義される様式もあり,最近,このProtective autophagyとがん治療が関係する論文が増加し,PubMed検索では300篇を超え,温熱治療の観点からも注目すべき細胞死の様式である.

 

参考文献:

 1)Jiang J, et al. Targeting autophagy enhances heat stress-induced apoptosis via the ATP-AMPK-mTOR axis for hepatocellular carcinoma. Int J Hyperthermia 36: 499-510, 2019.

 2)Kinsey CG, et al. Protective autophagy elicited by RAF→MEK→ERK inhibition suggests a treatment strategy for RAS-driven cancers. Nat Med 25: 620-7, 2019.

日本語はhttp://aasj.jp/news/watch/9823を参照

 3)Galluzzi L, et al. Molecular mechanisms of cell death: recommendations of the Nomenclature Committee on Cell Death 2018. Cell Death Differ 25: 486-541, 2018.

 

 

用語説明

*1RFA: Radiofrequency Ablation.ラジオ波焼灼療法のこと.RFAは腫瘍細胞に熱を加える治療であるが故に,不完全な焼灼では腫瘍の悪性度が急激に増すこともありRFA治療施行する際には肝がん細胞を残すことなく焼灼する必要がある.

*2クロロキン:Chloroquineは抗マラリア剤のひとつ.クロロキンおよびヒドロキシクロロキンはリソソームの分解能を阻害し,オートファジーを阻害する.

*3AMPK(AMP-activated protein kinase,AMP活性化プロテインキナーゼ):細胞内のエネルギー状態を監視し,その状態に応じて糖・脂質代謝などを調節するセリン・スレオニンキナーゼで「代謝マスタースイッチ」とよばれている.

*4AICAR:5-aminoimidazole-4-carboxamide ribonucleotide(和名,アカデシン).AMPKのアクチベーターであり,急性リンパ性白血病の治療に用いられている.

*5トラメチニブ:Trametinib.MEK阻害効果により,細胞の増殖に寄与するMAPK/ERKシグナル伝達経路を阻害して抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬に分類される抗がん剤.商品名メキニスト,BRAF遺伝子変異を有する切除不能な進行または再発の非小細胞肺がん,BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫が対象.

  

ハイパーサーミアに関する最近の話題27

 

Modulated-electro hyperthermiaよるリポソーム性抗がん剤取り込みの増強

近藤 隆(富山大学大学院医学薬学研究部)

 

 Modulated-electro hyperthermia (mEHTと略,通称”オンコサーミア”)は,フラクタル変調された13.56 MHzのRF波を利用する新規温熱療法である.この手法は,加温するという点では従来のハイパーサーミアと同じであるが,腫瘍への選択性の高い加温が特徴である.正常細胞と異なり,がん細胞が無秩序,独立の組織を形成するために起きる変調電波に対する吸収率の増加を利用している.また,mEHTにおいては温度上昇だけでは説明できない生物効果もあり,温度上昇以外の電磁波の非熱的作用も重要な因子となっている.

“Lipodox®”は,ドキソルビシン(Dox)を含有するジェネリックリポソーム抗がん剤である.本薬剤とmEHTあるいは対照となる温熱処理(HT)を併用して,培養細胞およびマウス移植腫瘍モデルでその効果の比較結果が報告された1).細胞として,ヒト肝がん由来HepG2, 同肺がん由来A549, 同グリオーマ由来U87MG, マウス結腸がん由来CT26を使用した.LipodoxをHTあるいはmEHTと併用し(両者とも温度条件は42oC, 30分),トリパン青染色でViabilityの低下を調べたところ,全細胞で単独のmEHTによる有意なViability低下を示すとともに,Lipodox併用でさらなる減少を引き起こした.mEHT 併用によるLipodoxの取り込みについてDox蛍光を指標に調べたところ,HepG2>A549>U87MG>CT26の細胞順であった.HepG2細胞におけるLipodoxの取り込みについて,NaN3 (ATPase阻害剤),Chlorpromazine (クラスリン介在エンドサイトーシス経路阻害剤),Wortmannin (マクロピノサイトーシス阻害剤),Filipin (カベオラ介在経路阻害剤)を用いたところ,Filipin以外で取り込み抑制が認められた.Wortmanninは,また,mEHT+LipodoxによるViability低下を顕著に抑制した.CT26を用いたマウス移植腫瘍系でも,mEHT+Lipodox群で明らかな腫瘍増殖抑制が認められるとともに,HT+Lipodox群に比べて腫瘍内取り込みも約2倍に増加した.以上の結果から,mEHTは,エネルギー依存性マクロピノサイトーシス*1を介してLipodoxの腫瘍内取り込みを増やし,治療効果に寄与すると,著者らは結論している.

mEHTは,通常のHTに比べると腫瘍細胞膜,特に脂質ラフトに熱損傷を集積しやすく,アポトーシスを誘導するとされている.卵巣がんや子宮頸がん細胞を用いた実験で,mEHTおよびオートファジー阻害剤である3-Methyladenineの併用によって,アポトーシスが増加するとの結果が報告されている2).mEHTについては臨床利用が先行し,その生物学的メカニズムについて不明な点もあったが,細胞膜輸送への影響も明らかとなり,今後のさらなる研究が望まれる.

 

参考文献:

  • Tsang YW, et al. Modulated electro-hyperthermia-enhanced liposomal drug uptake by cancer cells. Int J Nanomed.14: 1269-79, 2019.
  • Yang W, et al. Combined treatment with modulated electro-hyperthermia and an autophagy inhibitor effectively inhibit ovarian and cervical cancer growth. Int J Hyperthermia 36: 9-20, 2019.

*1マクロピノサイトーシス:エンドサイトーシスの一種.細胞外の液体とそこに含まれる物質を,マクロピノソームと呼ばれる大型で不均一な小胞によって細胞内に取り込む現象.特定のがん細胞において,細胞外の栄養分を効果的に細胞内に取り込むために,マクロピノサイトーシスが促進される場合がある.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題25

 

頭頸部癌に対する治療の動向とハイパーサーミアの役割

光藤健司(横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学)

 

頭頸部癌の治療は切除可能であれば手術が標準治療であるが,進行頭頸部癌に対しては放射線療法,薬物療法などを組み合わせた集学的治療となる.頭頸部癌に対して全身的な要因,手術拒否,あるいは遠隔転移があることから手術が行われない場合には,放射線治療に薬物療法,ハイパーサーミアなどを併用する治療となる.

頭頸部癌に対して放射線治療単独(RT群)と放射線治療にハイパーサーミアの併用(RT+HT群)に関するメタアナリシス1)では,局所領域制御率がRT群では39.6%(31.3%から46.9%),RT+HT群では62.5%(33.9%から83.3%)であった.また,RT+HT群はRT群と比較して生存期間中央値の向上,5年生存率の向上,stage III, IVでは無病生存率の向上を認めた.しかし,これらの試験では対象症例およびハイパーサーミアの回数,時間などが均一ではない.また,ハイパーサーミアのターゲットが原発腫瘍,頸部転移リンパ節,あるいは原発腫瘍と頸部転移リンパ節の両方など一定ではないが,ハイパーサーミアを併用することによって局所領域制御,生存率の向上に寄与している.

頭頸部癌に対する化学放射線治療とハイパーサーミア併用の有効性についての比較試験は少ない.T1-4N2-3M0上咽頭癌に対する化学放射線治療(CRT群)と化学放射線治療と頸部転移リンパ節にハイパーサーミアを併用した治療(CRT+HT群)との比較が行われ,5年局所制御率はCRT群: 76.9%,CRT+HT群: 96.1%(p= 0.001),5年無病生存率はCRT群: 20.5%,CRT+HT群: 51.3%(p= 0.001),5年生存率はCRT群: 50.0%,CRT+HT群: 68.4%(p= 0.001)で,局所制御率,無病生存率,生存率すべてにおいてCRT+HT群が有意に高かった2).そのほか再発喉頭癌に対し化学放射線治療(CRT群)と化学放射線治療にハイパーサーミアの併用(CRT+HT群)の比較試験では,生存率においてCRTにHTを併用した方が良好な治療効果が得られたという1990年の報告もあった.

頭頸部は咀嚼・嚥下・発声・呼吸などの重要な機能があることから,近年では局所進行頭頸部癌に対しても化学放射線療法による臓器温存が図られるようになってきたが,その治療効果は決して満足のいくものではない.局所進行頭頸部癌,再発/転移頭頸部癌に対して分子標的薬であるCetuximabや免疫チェックポイント阻害剤であるNivolmabなどの薬物療法が行われるようになった.今後,新たな治療法として,従来の化学放射線療法,薬物療法にハイパーサーミアを併用することにより予後の改善が期待できる.そのためには基礎および臨床研究が望まれる.

参考文献

  • Datta NR, et al. Hyperthermia and radiotherapy in the management of head and neck cancers: A systematic review and meta-analysis Int J Hyperthermia, 32:31–40, 2016.
  • Kang M, et al. Long-term efficacy of microwave hyperthermia combined with chemoradiotherapy in treatment of nasopharyngeal carcinoma with cervical lymph node metastases. Asian Pac J Cancer Prev, 14:7395-400, 2013.

ハイパーサーミアに関する最近の話題26

 

Na+チャネルタンパク質がGRP78分解を介して胃がん細胞の増殖や転移を抑制する

大塚健三(中部大学応用生物学部細胞ストレス生物学教室)

 

分子シャペロン(多くの熱ショックタンパク質)やその転写因子であるHSF1が,がんの発生や進展に寄与していることはよく知られている.そのうちの一つ,GRP78(小胞体に存在するHSP70のメンバー)はもともと小胞体内でタンパク質の折りたたみや品質管理を担う分子シャペロンとしてよく研究されてきた.最近,GRP78は小胞体だけでなく細胞質や細胞膜さらには細胞外にも局在することがわかり,それらのGRP78が,がん細胞の生存や増殖を促進するとともに血管新生にも関与していることが示されている1).がんは,基本的にがん遺伝子やがん抑制遺伝子の変異の積み重ねによって発生することは広く受け入れられている.近年,さまざまながんにおいて,RBBRCA1CDH1E-cadherinなどのがん抑制遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランド(シトシンとグアニンの配列が多く存在する領域)のシトシンが高度にメチル化されており,このようなエピジェネティック変化に伴うがん抑制遺伝子の発現低下によって,がんの発生に寄与することも多く報告されている2)

ここで紹介する論文は,胃がん細胞におけるNa+チャネルタンパク質(SCNN1B)とGRP78に関する報告である3).なぜ,Na+チャネルタンパク質とがんが関係しているのだろうか?胃がん細胞において,上皮細胞に発現するNa+チャネルタンパク質(SCNN1B)をコードする遺伝子のプロモーター領域が高度にメチル化されており,SCNN1Bタンパク質の発現が低下していることが示された3).つまり,SCNN1Bの発現が低下することで胃がんの発生につながるので,SCNN1Bはがん抑制因子として働いているのだという.そして,驚くべきことに,正常な細胞ではイオンチャネルとしての機能とは全く関係なく,SCNN1Bが分子シャペロンの一つであるGRP78と相互作用することでGRP78の分解を促進し,細胞の増殖を抑制していることが判明した.つまり,胃がん細胞ではSCNN1B遺伝子がメチル化されて発現が低下し,そのことによってGRP78が発現増加することで細胞の増殖が促進しているというのである.

 もう少し詳しく見てみると,いくつかの胃がんの培養細胞株で遺伝子のメチル化を調べたところ,SCNN1B遺伝子がメチル化されており,SCNN1Bが発現低下していることがわかった.また,胃がん患者のがん組織とその周辺の正常組織を比較すると,がん組織でやはりSCNN1B遺伝子がメチル化されており,SCNN1Bも発現低下していた.胃がん患者の生存率をみると,SCNN1Bタンパク質高発現グループは低発現グループと比較して長期生存する割合が高かった.これらの結果から,SCNN1Bはがん抑制因子として機能していることが示唆される.これを確かめるために,胃がん細胞(SCNN1B低発現)にSCNN1Bを高発現させると,細胞増殖が抑制されるとともにアポトーシス細胞死が増加した.また,細胞遊走能や浸潤能(転移能)も低下した.次に,胃がん細(SCNN1B低発現)をマウスに移植すると次第に増殖してくるが,SCNN1Bを高発現させた胃がん細胞はその増殖が抑制された.これらの結果からもSCNN1Bが,やはりがん抑制因子として働いていることが示唆される.

 それでは,SCNN1Bはどのようにしてがん抑制因子として機能しているのだろうか?免疫沈降実験で調べたところ,SCNN1Bが分子シャペロンの一つであるGRP78(小胞体に存在するHSP70のメンバー)と相互作用することがわかり,SCNN1BがGRP78と相互作用することでGRP78をユビキチン化してその分解を促進していることが示された.さらに,決定的実験として,もともとSCNN1Bをほとんど発現していない細胞(したがってGRP78は発現している)にSCNN1Bを高発現させるとGRP78発現が低下し,その結果細胞増殖が低下し遊走能も低下することを示した.

 今回の論文の新規な点は繰り返しになるが,①がんとは一見関係なさそうなNa+イオンチャネルタンパク質のSCNN1Bが,がん抑制因子として働いていること,②SCNN1Bが分子シャペロンのGRP78と相互作用することでその分解を促進して細胞の増殖を抑制しているということである.ただし,小胞体内のGRP78は重要な分子シャペロンなので分解されずに品質管理などに機能していると思われる.

 

参考文献

 

 

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題24

固形腫瘍に対する温熱療法に関するエビデンスの創出

~ハイリスク悪性軟部腫瘍に対するネオアジュバント

化学療法における温熱療法併用に関する無作為臨床試験~

 

 森田 勝 (九州がんセンター消化管外科) 

 

個々の癌患者に対し最良の治療を選択する際,evidence-based medicine(EBM)を考慮することは重要である.一般にエビデンスレベルの高い研究として,無作為比較試験(RCT: randomized controlled trial)やRCTのメタアナリシスがあげられ,一流の国際誌に取り上げられることも多い.

 温熱療法が抗癌剤・放射線療法の効果増強に寄与することは,基礎実験,臨床経験からも十分に認識されている.しかし,温熱療法の効果に関する前向き臨床試験の結果に関する発表は意外に少ない.本年,JAMA Oncology誌に,ESHO(欧州ハイパーサーミア学会)主導で行われた「ハイリスク悪性軟部腫瘍に対するネオアジュバント化学療法における温熱療法併用に関する無作為臨床試験(EORTC 62961-ESHO 95)」の長期成績が掲載され1),さらに,重要な結果として,Nature Reviews Clinical Oncology 誌にて紹介された2)

 ハイリスク悪性軟部腫瘍に対しては局所療法や全身化学療法が行われるが,治療後の再発率は高い.本試験は,遠隔転移陰性,筋膜まで達する5 cm以上,FNCLCCグレード2,3の悪性軟部腫瘍を対象とし,無作為にネオアジュバント化学療法(化療群)と化学温熱療法(温熱併用群)に1:1で割り付けた.局所療法(手術±照射)の前後に化療群では全身化学療法(doxorubicin, ifosfamide, etoposide),温熱併用群ではifosfamide投与に局所温熱療法(42℃,60分)を加えた.341例のうち329(化療:167,温熱併用:162)例が適格例であった.観察期間中央値が11.3年と長期にフォローされている.一次評価項目である局所無増悪生存期間は中央値で化療群29.2ヶ月に対し,温熱併用群では67.3ヶ月で,ハザード比(HR)でみると0.65と温熱併用群で有意に良好な成績であった.全生存率でみても化療,温熱併用群では各々5年生存51.3%, 62.7%,10年生存 42.7%, 52.6%と温熱併用群が有意に良好であった(HR:0.73).さらに,年齢,腫瘍占拠部位,腫瘍径,切除度,グレード,組織型など全てのサブクラス解析において,温熱併用群は化療群に対し予後良好であった.

 本試験は,厳密にコントロールされた前向き試験の結果として,温熱療法の化学療法への上乗せ効果を,長期生存で示した極めて重要な報告である.さらに,臨床試験で結果を出すことが困難な稀な腫瘍で,温熱療法の有効性を示している点でも意義深い.この結果は,悪性軟部腫瘍にとどまらず,他の固形腫瘍に対しても温熱療法の臨床効果を期待させる結果といえる.論文中では,欧州で行われている膵癌に対する第Ⅲ相無作為試験(NCT01077427)を紹介している.今後,温熱療法が各々の固形腫瘍で標準療法と認められ確立していくためには,様々な障壁はあるものの,本研究のように質の高い多施設共同の前向き試験を企画し,結果を得ることが望まれる.

 

参考文献

  1. Issels RD, et al. Effect of neoadjuvant chemotherapy plus regional hyperthermia on long-term outcomes among patients with localized high-risk soft tissue sarcoma: The EORTC 62961-ESHO 95 randomized clinical trial. JAMA Oncol 4:483-92, 2018.
  2. Killock D. Sarcoma: Local hyperthermia improves survival. Nat Rev Clin Oncol 15:266, 2018.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題23

 

液-液相分離による細胞応答の新展開

 吉澤 拓也(立命館大学)

 森 英一朗(奈良県立医科大学)

 

近年,がんの三大治療法(外科手術・放射線療法・化学療法)が画期的に発展を遂げてきたにもかかわらず,今なお,がんは日本人の死因の一位である.がん治療においては,放射線治療や化学療法によってDNA損傷を生じさせ,がん細胞を細胞死へと導くことを目指している.しかしながら,がん細胞はDNA損傷応答を含めたストレス応答機構が正常細胞よりも発達しているため,ストレス応答制御ががん治療において重要である.ところが,がんのストレス応答機構には,まだまだ未解明の現象が多く残されている.

近年,タンパク質構造を持たない天然変性配列が様々な疾患と関連性があることが明らかになってきた1).天然変性配列とは,áヘリックスやâシート等の2次元構造を取らないタンパク質の領域のことを意味し,そのアミノ酸の組成から,LC(低複雑性:low-complexity)配列(もしくはLCドメイン)とも呼ばれている.LCドメインとは,アミノ酸20種類のうち,わずか数種類だけを使って構成されたタンパク質の配列を有するタンパク質領域であり,その構造や機能に関しては長年謎に包まれていた.

細胞の中には,ミトコンドリアや小胞体のように,膜によって分画されるオルガネラが存在する.一方で,膜を持たないオルガネラは(membrane-less organelle),核小体やRNA顆粒などのような細胞内の特定の部位として認識されており,タンパク質の持つ新たな機能として近年着目されている.そして,その形成にはLC配列を有するタンパク質によるcross-âポリマー(âシート構造を介して形成されたポリマー)形成や液-液相分離(liquid-liquid phase separation)という現象が重要であるということが徐々に明らかになってきた.

染色体転座による肉腫の原因遺伝子として知られているFUS(fused-in-sarcoma)は,RNA結合タンパク質であり,N末領域にLC配列を有する.FUSは,真核細胞のDNA修復機構において機能しており,この機構の中心的制御酵素であるDNA依存性タンパク質リン酸化酵素(DNA-PK)によってリン酸化されることが知られている2).FUSのLCドメインがDNA-PKによってリン酸化されると,ポリマー形成が阻害される3).また,FUSのLCドメインが相分離してできた液滴内部にも,ポリマー構造が存在していることが再確認され,そのポリマー構造がリン酸化により崩壊することで,液滴が融解される機構が明らかになった4)

細胞が温熱などのストレス環境にさらされると,ストレス顆粒と呼ばれるRNAに富んだ膜を持たないオルガネラを形成することが知られており,このストレス顆粒の形成には,FUSなどのLCドメインが重要な役割を果たしている.また,核内輸送受容体のImportinがシャペロン様に働くことで,FUSの液-液相分離が阻害されることが明らかになった5).この発見により,LCドメインによる液-液相分離という現象を理解するためには,一方向性の機序の解明だけでは不十分であるということが示された.

古くから,DNA修復因子の細胞内での挙動は,複雑に制御されていることが知られている.例えば,BRCA2などのDNA修復に関わるタンパク質が温熱処理により減少したり,DNA損傷認識因子(53BP1やSMC1)のフォーカス形成が,温熱処理により阻害を受けたり,DNA修復因子のMre11が温熱処理後に細胞核から細胞質へと移動したりするとされてきた.しかし,温熱処理後しばらくすると,再び核内に戻り,DNA損傷部位に集積する6)ことも明らかになった.さらに,物質の輸送に関連するImportinがFUSの相分離を制御している5)ということから,液-液相分離と物質輸送の関係については,これまで考えられていたよりも複雑であることが想像され,がん細胞のストレス応答機構の理解には,これらの複合的な理解が欠かせない.液-液相分離の領域において,今後の研究の展開が期待される.

 

参考文献

  1. Taylor JP, et al. Decoding ALS: from genes to mechanism. Nature 539:197-206, 2016.
  2. Deng Q, et al. FUS is phosphorylated by DNA-PK and accumulates in the cytoplasm after DNA damage. J Neurosci 34:7802-13, 2014.
  3. Kato M, et al. Cell-free formation of RNA granules: low complexity sequence domains form dynamic fibers within hydrogels. Cell 149:753-67, 2012.
  4. Murray DT, et al. Structure of FUS protein fibrils and its relevance to self-assembly and phase separation of low-complexity domains. Cell 171:615-27, 2017.
  5. Yoshizawa T, et al. Nuclear import receptor inhibits phase separation of FUS through binding to multiple sites. Cell 173:693-705, 2018.
  6. Takahashi A, et al. The foci of DNA double strand break-recognition proteins localize with gamma H2AX after heat treatment. J Radiat Res 51:91-5, 2010.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題22

数値計算による体内での温度上昇分布解析 

齊藤 一幸(千葉大学フロンティア医工学センター)

 

ハイパーサーミアをはじめとする温熱治療は,患部を何らかのエネルギーによって温度を上昇させ,様々な治療効果を期待する治療法であるため,患部およびその周辺の温度を知ることは極めて重要である.しかしながら,現在市販されている誘電加温装置においては温度センサが装備されているものの,その侵襲性のため治療中に患部の温度を計測したという報告は多くない.一方,MRI(magnetic resonance imaging:磁気共鳴画像化法)装置による非侵襲体内温度分布測定は,技術的には可能であり,極めて有望な技術であるものの,現時点では装置が大型かつ高価なため,市販されている誘電加温装置との組み合わせは実現していない1).こういった現状を鑑みると,数値計算(コンピュータシミュレーション)による患者体内での温度上昇分布解析は,現在の治療において重要な技術であると考えられる.

数値計算により体内の温度を計算する様式は,計算領域の設定方法により,2通りに分類することができる.第一は,組織内加温型もしくは腔内加温型ハイパーサーミアや刺入式アプリケータによる凝固療法などの温度上昇分布を計算する際に,アプリケータ近傍のみを計算領域に設定する方法である.この方法は,アプリケータ(多くの場合刺入型微細径アンテナもしくは針状電極)の開発および特性改善のために用いられることが多い.最近では,肝がんの凝固治療用マイクロ波アンテナの特性を把握するために数値計算が用いられ2),また,刺入式マイクロ波アンテナ極近傍領域の過加熱を防止するために冷却水を還流させた際の温度上昇分布を算出するといったことが行われている3).筆者らも,刺入式マイクロ波アンテナにおける組織凝固を高精度に考察すべく,組織の温度上昇による物性定数(電気定数,熱定数)の変化をも数値計算に組み込み,組織の温度上昇やアンテナ近傍組織の含水率を数値計算により解析し,温度上昇によりアンテナ近傍の組織含水率が顕著に低下するような興味深い結果を得ることができた4)

他方,我が国で広く行われている誘電加温装置による加温では,電極を含む患者の体の広範囲(理想的には,体全体)を計算領域として設定しなければならない.この場合は当然のことながら,計算機内に多大な記憶領域(メモリ)が必要である.特に,電磁界解析では,考慮しなければならないパラメータが多く(電界・磁界それぞれがベクトル量であり,大きさと方向を考慮しなければならない),計算には多大な時間も必要である.

ところで,今日広く行われている放射線治療においては,施術前に撮影した患部の断層画像を用いて,患部での線量分布を綿密かつ高速に計算し,それを基に治療が行われている.ハイパーサーミア治療において同様のこと,すなわち,患部の断層画像を基に,装置の出力や加温時間を設定することにより患部周辺の正確な温度上昇分布の可視化ができれば有用である.しかし,上述のように多大な計算機負荷のため,現時点ではそういったことは実現していない.ただし,現在では,様々な技術の進展によりこういったことが実現に近づいている.まず,患部の計算モデルについては,患者個々人のデータではないものの,日本人の平均的体形をもつ“数値人体モデル”が開発され5),計算機内で使用できる環境が整っている.したがって,誘電加温装置であれば,この数値人体モデルを2つの加温用電極ではさんだモデルは比較的容易に構築できる6).近年では,比較的簡便な操作で,電磁界解析と温度上昇分布解析をシームレスに行う(連成解析という)ことが可能な解析ソフトウェアが市販されている.さらに,今日では,手ごろな価格のワークステーションでも,こういった大規模計算が比較的短時間で可能になりつつある.このように,現時点で,放射線治療での線量分布計算のような“ほぼリアルタイムでの計算”とはいかないものの,治療前に患者体内の温度上昇分布をおよそ把握する程度の計算は可能である.ハードウェア,ソフトウェアのさらなる進展により,近い将来には,放射線治療の治療計画策定のようなことがハイパーサーミア治療においても可能になるよう期待したい.

 

参考文献

  • Kuroda K. Role of magnetic resonance imaging in guiding thermal therapies - A brief technical review -. Thermal Med, 23:71-84, 2007.
  • Luyen H., et al. Microwave ablation at 10.0 GHz achieves comparable ablation zones to 1.9 GHz in ex vivo bovine liver. IEEE Trans Biomed Eng, 61: 1702-1710, 2014.
  • McWilliams B.T., et al. A directional interstitial antenna for microwave tissue ablation: theoretical and experimental investigation. IEEE Trans Biomed Eng, 62: 2144-2150, 2015.
  • Endo Y., et al. Temperature analysis of liver tissue in microwave coagulation therapy considering tissue dehydration by heating. IEICE Trans Electronics, E99-C: 257-265, 2016.
  • 長岡智明ら. 日本人成人男女の平均体型を有する全身数値モデルの開発. 生体医工学, 40: 239-246, 2002.
  • 熊谷一樹ら. 誘電加温装置使用時のホットスポット低減を目的とした充填物. Thermal Med, 32: 5-11, 2016.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題21

 

最近報告されたがんの統計と疫学的解析結果報告について

 

増永 慎一郎(京都大学複合原子力科学研究所)

 

悪性疾患を含む各疾患に対する標準治療が,科学的根拠に基づいた臨床試験の成果に従い,整備されつつある.この標準治療を有効に適応するためには実臨床における診療の傾向や患者さんの動向に関して正確に把握する必要がある.同様に,標準治療と承認されたハイパーサーミアを実施する際にも必要となる.今回は,がん治療に関わる者として了解しておくべき最近報告された「がんの統計と疫学的解析」の中から主な知見を報告する. 

世界3,700万症例に基づくがん5年生存率の調査報告1)

2015年には,CONCORDプログラムの第2サイクルが,保健システムの有効性の指標としてのがん生存の世界的な監視を確立し,がん制御に関する世界的な方針を知らせるようになった.2000〜2014年の15年間に癌と診断された3,750万人の患者の個人記録が含まれ,71の国と地域で322の集団ベースのがん登録によりデータが提供され,そのうち47件が100%の人口をカバーしている.成人の皮膚,食道,胃,結腸,直腸,肝臓,膵臓,肺,乳房(女性),子宮頸部,卵巣,前立腺および黒色腫,および脳腫瘍,白血病および成人と子供のリンパ腫が解析された.

ほとんどのがんの5年生存率は,依然として米国/カナダ,オーストラリア/ニュージーランド,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンで最も高かった.また,デンマークは,多くのがんに関して,他の北欧諸国との差が縮まりつつあった.生存率は,比較的致死性の高いがんの一部を含め,全般に上昇傾向にあり,肝,膵,肺のがんの生存率が最大5%上昇した国もあった.2010~2014年に診断を受けた結果によると,乳がん女性の5年生存率は,オーストラリアが89.5%,米国は90.2%と高い値を示したが,インドでは66.1%と低い値を示し,依然として国によって大きな差が認められた.消化器がんの年齢調整5年生存率は,東アジア諸国が最も優れていた.胃がんは韓国が68.9%(日本は60.3%),結腸がんも韓国が71.8%(日本は67.8%),直腸がんも韓国が71.1%(日本は64.8%)で最も高く,食道がんは日本が36.0%(韓国は31.3%),肝がんは台湾が27.9%(日本は30.1%だがデータの信頼性が低かった)であり,最も良好な結果であった.これに対し,東アジアの国は皮膚悪性黒色腫(韓国:59.9%,台湾:52.1%,中国:49.6%),リンパ性悪性腫瘍(52.5%,50.5%,38.3%),骨髄性悪性腫瘍(45.9%,33.4%,24.8%)の5年生存率が,他の地域に比べて低かった.小児では,急性リンパ芽球性白血病の5年生存率が,エクアドルの49.8%からフィンランドの95.2%まで大きな差があった.また,小児の脳腫瘍の5年生存率は,成人よりも高かったが,ブラジルの28.9%からスウェーデン/デンマークのほぼ80%まで,国によって大きな差がみられた.

肺,上部消化管および膀胱癌患者における禁煙と生存率との関連2):

がん患者が禁煙することで死亡率が低下するか否かはわかっていない.今回,1999~2013年の後ろ向きコホート研究で,肺がん2,882例,上部気道消化管がん757例,膀胱がん1,733例について,がん診断後1年間の禁煙と全死亡率およびがん特異的死亡率との関連を評価した結果,肺がんと上部気道消化管がんでは禁煙した患者は喫煙し続けた患者より死亡リスクが低いことが示されたが,膀胱がんでは禁煙と死亡の関連はみられなかった.

がん生存者の食事の質と全死因死亡および癌特異的死亡との関連3)

がんサバイバー(経験者)は,野菜や果物,全粒粉や玄米など精製されていない全粒穀物,たんぱく質,低脂肪の乳製品が多く,栄養バランスに富む食事を取ると死亡リスクが低下する可能性のあることが,新たな研究で示された.1988~1994年の米国民健康栄養調査(NHANES)IIIに参加した約3万4,000人のうち,がんと診断されていた1,191人を対象に食事の質と死亡リスクとの関係を調べた結果,食事の質が高い人では低い人と比べて,がんによる死亡リスクが65%低減することが分かった.

ただし,この研究は因果関係を証明したものではなく,食事の質を高めると延命効果がどの程度得られるのかは明らかではない上に,運動などの健康に良い他の習慣が影響した可能性も考慮されていない.さらに,喫煙の影響が調整されておらず,改定前の食生活指針が用いられているなど,この研究にはいくつかの限界点があるものの,「最近集積されつつある,がんサバイバーに健康的な食事を推奨すべきとするエビデンスと概ね一致する」と考えられる.ただし,がんの治療中や回復期には必要とされる栄養素が変わることがあるため,がんサバイバーは自分に必要な栄養素や運動について,医療従事者に事前に相談する必要もある.

前立腺癌と診断された男性の身体活動と生存率との関連4)

前立腺がん診断後の身体活動と死亡率との関連を調べた研究はほとんどない.前立腺がん診断後の身体活動が全死亡率および前立腺がん特異的死亡率に影響を与えるかどうかを,大規模コホートで検討し,身体活動性の高さが全死亡率および特異的死亡率の低下と関連することが示された.

1997~2002年に限局性前立腺がんと診断され,2012年まで追跡調査された男性4,623例のデータを分析した.追跡期間中,561例が死亡し,そのうち194例が前立腺がんにより死亡した.全死亡率は,レクリエーションを5METs・時/日以上,歩行もしくは自転車走行を20分/日以上,家事を1時間/日以上,運動を1時間/週以上行った男性が,それぞれの活動でより活動性が低い男性と比較して有意に低かった.前立腺がん特異的死亡率は,歩行または自転車走行20分/日以上,運動1時間/週以上の男性が有意に低かった.よって,より高いレベルの身体活動は,全死因および前立腺癌特異的死亡率の低下と関連していたと思える.

低脂肪食と乳がん女性の生存との関連5)

女性健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)研究では既に,低脂肪食を取っている女性は侵襲性の高いタイプの乳がんを発症する確率が低いことが明らかにされている.今回,乳がん診断後の生存率に対する低脂肪食の効果を明らかにするため,1993~1998年に米国40カ所の施設で行われたWHI研究のデータが事後解析された.同研究の参加者は,研究参加時に乳がんと診断されておらず,食事の総摂取カロリー量に占める脂肪の比率が20%未満になることを目指した低脂肪食群(40%,1万9,541人)と一般的な食事(総摂取カロリー量の3分の1以上が脂肪)を継続する群(60%,2万9,294人)にランダムに割り付けられた.8.5年(中央値)追跡し,参加者のうち1,764人が乳がんと診断され,診断時の年齢は平均67.6歳で,総死亡数は516人だった.乳がんの診断から11.5年後(中央値)の全生存率を比較した結果,低脂肪食群では,一般食群に比べて10年生存率が22%高かった.死亡した女性516人のうち,乳がんで死亡した女性は低脂肪食群で68人であったのに対し,一般食群では120人であった.食事による脂肪摂取量が少ない女性は,心血管疾患をはじめとする他の原因による死亡率も低く,期間中に心血管疾患で死亡したのは通常食群で64人であったのに対し,低脂肪食群では27人であった.

よって,生涯のどの時点においても,低脂肪食は健康に極めて大きな利益をもたらすと言える.

乳がん無発症生存に対するアルコール消費量とアジュバントホルモン療法の効果解析6)

飲酒は乳がんリスクを増加させるが,乳がん診断後の生存との関連におけるこれまでの知見は一貫していない.2007~2012年に原発性乳がんと診断された女性1,399例に,診断される前の年の飲酒量が調査され,アジュバントホルモン療法の有無に関係なく,飲酒者で無発症生存率が高いことが報告された.観察された逆相関の根底にあるメカニズムを解明するために今後の解析が必要とされる.

 

参考文献

1)  Allemani C., et al. Global surveillance of trends in cancer survival 2000-14 (CONCORD-3): analysis of individual records for 37,513,025 patients diagnosed with one of 18 cancers from 322 population-based registries in 71 countries. Lancet, 391: 1023-1075, 2018.

2)  Koshiaris C., et al. Smoking cessation and survival in lung, upper aero-digestive tract and bladder cancer: cohort study. Br J Cancer, 117: 1224-1232, 2017.

3)  Deshmukh A.A., et al. The association between dietary quality and overall and cancer-specific mortality among cancer survivors, NHANES III. JNCI Cancer Spectrum, 2; pky022, 2018.

4)  Bonn S.E., et al. Physical activity and survival among men diagnosed with prostate cancer. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev, 24: 57-64, 2015.

5)  Chlebowski RT, et al. Association of low-fat dietary pattern with breast cancer overall survival: a secondary analysis of the women's health initiative randomized clinical trial. JAMA Oncol, 24: e181212, 2018.

6)  Kowalski A, et al. Interactions between alcohol consumption and adjuvant hormone therapy in relation to breast cancer-free survival. J Breast Cancer, 21: 158-164, 2018.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題20

 

ナノロッドを用いた癌治療のための光温熱治療(Photothermal therapy)について

 

近藤 隆(富山大学 大学院医学薬学研究部)

 

光を用いた癌治療にはレーザ光照射による温熱治療(レーザサーミア)や光増感剤を投与し,標的となる生体組織にレーザ光を照射して光増感剤から一重項酸素などの活性酸素を生じさせ,これによって癌を治療する光線力学治療(PDT;Photodynamic therapy)があるが,前者では腫瘍選択性,後者では光化学反応に酸素を必要とする点,等の課題もある.

現在,この光医学とナノサイエンスを融合する流れが加速している.PubMed検索で,ナノ粒子を検索すると17万件,ナノメディシンを検索すると2万件以上がヒットする.ナノサイズ粒子には①比表面積が大きく,生体分子の多量結合が可能,②適切な表面加工で,生体内循環性が向上,③EPR(Enhanced permeation and retention)効果による腫瘍集積性の向上,等の特徴がある1).ナノメディシンの一角をなす光温熱治療(PTT;Photothermal therapy)はナノ粒子利用で開始されたが,最近は近赤外線領域の吸収に優れることから,長波長レーザを用いた PTTとして球状ナノ粒子よりもナノロッドの利用が注目を浴びている.ナノロッドではアスペクト比(縦横比)を上げると吸収波長がさらに長波長側にシフトして光の深達性が向上し,また,表面を癌に特異的な抗体で加工することにより,癌組織への選択性をより高めることが可能で,ナノロッドの光発熱効果を利用したがん治療の利点は多い.

以下に,最近の研究例を示す.メラノーマ細胞に対する親和性を増すために葉酸修飾した金ナノロッド(GNRs-FA)を合成し,細胞水準でPTTを実施した.マウスメラノーマB16-BL6細胞をGNRs-FAで24時間処理した後,808 nmの近赤外レーザを異なる強度(0.96 W, 1.28 W, 1.59 W)で,15分間照射した.近赤外放射温度計の測定では,到達温度の最高値は,それぞれ43 oC, 46 oC,および49 oCであった.一方,GNRs-FAを含まない対照のPBS溶液では温度上昇はなかった.細胞死を検討しところ,43 oCでは生存細胞が50%以上で,細胞死であるアポトーシス,ネクロプトーシス,およびネクローシスの割合が10%,18%および18%であった.49 oCではネクローシスの割合が50%以上となるが,中等度の46 oCではアポトーシス,ネクロプトーシスの割合が高くなり後者で,最大の35%を示した.これらの結果は温度依存性に細胞死の様式が変わり,PTTではネクロプトーシスがその中で重要な役割を果たしていることが示された2).さらに,最近,放射線およびMRI診断に利用でき,また,治療にも利用できるGdシェルで加工された金ナノロッドが開発された.ラット結腸癌の肝転移モデルで,これを用いた診断と体外からカテーテルを用いたインターベンショナルPTT 治療実験の結果が報告された3).ナノロッドは形状や表面加工の工夫により,多くの応用が可能で,これに近赤外レーザを組み合わせた癌治療のための光温熱治療はさらなる発展が期待できる.

 

補足説明

ナノロッド:ナノパーティクル(ナノ粒子)には球状とロッド(棒)状の微粒子があり,ロッド(棒)状のナノ粒子のことを「ナノロッド(Nanorod)」という.中でも金ナノロッドは可視~近赤外領域に短軸方向および長軸方向の表面プラズモン共鳴 (Surface Plasmon Resonance)に由来する二本の吸収帯を示し,ロッドの形状によって二つの吸収ピークを制御できる.

 

参考文献:

  1. Elahi N., et al. Recent biomedical applications of gold nanoparticles: A review. Talanta, 184: 537-556, 2018.
  2. Zhang Y., et al. Temperature-dependent cell death patterns induced by functionalized gold nanoparticle photothermal therapy in melanoma cells. Sci Rep, 8: 8720, 2018.
  3. Parchur A.K., et al. Vasculature interventional radiology-guided photothermal therapy of colorectal cancer liver metastasis with theranostic gold nanorods. ACS Nano, 2018. DOI:10.1021/acsnano.8b01424.

 

ハイパーサーミアに関する最近の話題19

 

磁性ナノ粒子と交流磁場による癌温熱治療の泌尿器系腫瘍への応用

 

河合 憲康(名古屋市立大学 大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野)

 

磁性体である酸化鉄微粒子:マグネタイト(Fe3O4)は交流磁場(周波数100-500 kHz程度)下で発熱し,そのメカニズムはヒステリシス損失あるいは緩和損失と考えられている.その性質を利用して腫瘍組織に磁性ナノ粒子を投与して体外から交流磁場照射を行うハイパーサーミアへの応用が行われている1)

私たちはマグネタイトと交流磁場照射を用いた新しい癌温熱治療を,泌尿器科医の立場から臨床応用を目標に研究を続けてきた.泌尿器系癌のうち膀胱癌は抗癌剤も放射線も効果を示すが,腎癌にはどちらも効果がない.このように癌腫が違えば治療効果が違うので,マグネタイトと交流磁場照射を用いた新しい癌温熱治療が泌尿器系癌の代表である前立腺癌に効果があるのかを最初に検討した.磁性微粒子はマグネタイトを正電荷脂質で包埋したmagnetic cacionic liposome(MCL)1) を用いた.F344ラットの背部皮下にラット由来の前立腺癌細胞を移植した.腫瘍塊となったところでMCLを注入し,交流磁場照射を行った.MCLを注入しなかった対照群と比較して,腫瘍の増殖を抑制することができた2).ヒトの前立腺癌に対する効果を確認するために,ヒト前立腺癌細胞株LNCap (リンパ節転移由来)とPC-3 (骨転移巣由来)をヌードマウス背部皮下に移植し,その腫瘍塊にMCLを注入し交流磁場照射を行った.さらに磁場照射は3日間連続を1クールとして,腫瘍の再増殖が認められたら,再度1クールの磁場照射を行うことを繰り返した.LNCapもPC-3も腫瘍は完全退縮した.前立腺癌は男性ホルモン(アンドロゲン)に感受性があり,そのためアンドロゲン遮断が前立腺癌治療の基本である.近年,アンドロゲンに感受性がない前立腺癌の治療が難渋し,その治療法の開発が喫緊の課題となっている.LNCapはアンドロゲン感受性があり,一方のPC-3はアンドロゲン感受性がない.つまり,臨床面で課題となっているアンドロゲンに感受性がない前立腺癌の治療も可能であることを示した3).さらに前立腺癌の特徴は高頻度に骨転移を起こすことである.骨転移の治療は前立腺癌の治療において重要な要素である.そこでラットの頭頂骨4),大腿骨5) で前立腺癌の骨転移モデルを作成し,MCLを局注して交流磁場照射を行った.コントロール群と比較して骨転移の進展を抑制することを示した.

最近,マグネタイトを局所注射ではなくdrug delivery system(DDS)で標的部位に到達させるという基礎研究が膀胱癌で行われている.Rezaelらは膀胱癌細胞が発現しているCD47に対する抗体を結合した磁性ナノ粒子を作成し,DDSで膀胱癌に到達させ磁場照射により膀胱癌細胞を死滅させたというin vitroの成果を報告している6

私も泌尿器科医として,前立腺癌,膀胱癌,腎癌に対するマグネタイトと交流磁場照射による新規癌温熱治療を実用化したいと今後も研究を続けていきたい.

 

参考文献:

  1. Ito A., et al. Intracellular hyperthermia using magnetic nanoparticles: A novel method for hyperthermia clinical applications. Thermal Med, 24: 113-29, 2008.
  2. Kawai N., et al. Anticancer effect of hyperthermia on prostate cancer mediated by magnetic cationic liposome and immune-response induction in transplanted syngenic rats. Prostate, 64:373-81, 2005.
  3. Kawai N., et al. Complete regression of experimental prostate cancer in nude mice repeated hyperthermia using magnetic cationic liposomes and a newly developed solenoid containing a ferrite core. Prostate, 66: 718-27, 2006.
  4. Kawai N., et al. Effect of heat therapy using magnetic nanoparticles conjugatednwith cationic liposomes on prostate tumor in bone. Prostate, 68: 784-92, 2008.
  5. Kobayashi D., et al. Thermotherapy using magnetic cationic liposomes powerfully suppresses prostate cancer bone metastasis in a novel rat model. Proatate, 73: 913-22, 2013.
  6. Razael G., et al. Development of anti-CD47 single-chain variable fragment targeted magnetic nanoparticles for treatment of human bladder cancer. Nanomedicine, 12:597-613, 2017.

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